灯台守のパン

この先は灯台守の眠る部屋 無口な者がパンを届けよ

「提供する側」と見なされること/ポリタスTV「女のくせにビール?」飲食とジェンダーバイアス

ポリタスTV 2024/2/13配信『「女のくせにビール?」飲食とジェンダーバイアス』回を観た。出演者の白央篤司さん(フードライター・コラムニスト)のご著書についてはこちらの記事でも書いているので、よかったらご覧ください。 youtu.be白央篤司さんがこれま…

ままならない人生にも希望がある/ベイビーわるきゅーれ1&2

▼ベイビーわるきゅーれ(2021年) 深川まひろ(伊澤彩織)と杉本ちさと(髙石あかり)は、殺し屋協会に所属するプロの殺し屋コンビ。高校卒業後は寮を出て独立するという協会のルールにしぶしぶ従い、東京・鶯谷で二人暮らしを始めたばかりだ。 慣れない新生…

世界はどこまでも広く/あの夏のルカ

シー・モンスターの少年ルカは、両親と祖母とともに海で暮らしている。シー・モンスターは肌が乾くと人間の姿に変わる性質を持つが、ルカの両親は人間や人間の世界に対して否定的で、息子が地上に興味を持つことを良しとしない。シー・モンスターと人間は相…

【追記あり】お知らせ/文学フリマ東京36に出店します

文学フリマ東京36(2023年5月21日(日))に出店します。小松岬のブースは【第一展示場 Q-08】、出店名は【入船出船】(いりふねでふね)です。※小松岬本人は不在です。 bunfree.net Webカタログはこちらです。 c.bunfree.net Twitterでも告知しています。 …

台所で孤独にならない・させない/台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集

フードライター・白央篤司さんの連載「名前のない鍋、きょうの鍋」が好きで、追いかけて読んでいる。 withnews.jp 鍋の湯気の向こうに見えるひとりひとりの人生、他者とのかかわり方、くだした決断、かつての夢と今の夢を尊重する真摯な文章が心地よい。加え…

女友達のタフラブの10年/わたしたちは無痛恋愛がしたい 〜鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん〜(~3巻)

星置みなみは、東京で働く23歳の女性。フォロワー4人の非公開Twitterアカウントで、表立っては言えない愚痴や本音を吐き出すのが習慣だ。本命の恋人と数多の浮気相手を行き来する恵比島千歳に片思い中だが、望みは薄い。みなみの相互フォロワーで友人の栗山…

あなたの「変身」が私を変える/メタモルフォーゼの縁側

佐山うらら(芦田愛菜)は、人付き合いが苦手で内向的な性格の17歳。迫りくる受験シーズンになんの展望も持てずにいる。 うららはある日、アルバイト先の書店にやってきた高齢の女性が、『君のことだけ見ていたい』というBLコミックを購入したことに衝撃を受…

私とあなたが対等であるために/ウ・ヨンウ弁護士は天才肌(ep10)

主人公 ウ・ヨンウ(パク・ウンビン)は、韓国の大手法律事務所ハンバダの新人弁護士。ソウル大およびソウル大ロースクールを主席で卒業した優秀な人物で、自閉スペクトラム症である。のり巻き店を営む父親とふたりで暮らし、法律とクジラをこよなく愛してい…

「もし」から始まる性差別への問い/ヒヤマケンタロウの妊娠

50年ほど前から、各地でシスジェンダー男性の妊娠が相次ぐ世界──。 主人公・桧山健太郎は、都心の広告代理店に勤めている。社内外ともに競争相手の多い業務をそつなくこなし、プライベートでは複数の相手と同時進行で気軽なデートを楽しむ。独身を謳歌し、育…

女たちよ、感情に心を揺らせ/私ときどきレッサーパンダ

トロントで暮らす13歳のメイリン・リーは、意欲にあふれ、「365日どんなことも自分で決める」人間であると自負している。が、実際は生活のほぼすべてを過干渉な母親に従って過ごしており、そのことにうっすら気づきつつもある複雑な時期だ。 メイリンの家は…

ハウジングファーストの重要性/サンドラの小さな家

夫・ガリー(イアン・ロイド・アンダーソン)から精神的・身体的暴力を受けていたサンドラ(クレア・ダン)は、いよいよ命の危険を覚え、次の住まいの当てがないまま娘ふたりと共に家を出る。ひとまずホテルに避難したものの、ホテル暮らしは費用が嵩む。公…

「してみることにした」、の明るさ/僕はメイクしてみることにした②

VOCEで連載していた『僕はメイクしてみることにした』(著者 糸井のぞ/原案 鎌塚 亮)が最終回を迎え、2月10日に単行本化した。 kc.kodansha.co.jp 連載中(第7話)までのレビューはこちら。 toudai-gurashi.hatenablog.com 改めて全話を読み通してみると、…

ホモソーシャル的価値観の内面化との戦い/ビルド・ア・ガール

主人公のジョアンナ(ビーニー・フェルドスタイン)は16歳。イギリスの片田舎の退屈な日々に飽き飽きしながらも、作家になる夢をあたため続けている。家族7人の暮らしに経済的余裕は無いが、兄のクリッシー(ローリー・キナストン)は気の置けない友人のよう…

「結婚」と書いて「就職」と読むか/ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語

南北戦争下のアメリカ。マーチ家のメグ、ジョー、ベス、エイミーの四姉妹は、それぞれ性格も好みも異なるが、マサチューセッツで仲睦まじく暮らしている。父は従軍牧師として出征中で、家計に余裕はない。しかし生活は愛情と思いやりに満ちている。 ローレン…

「傍観者」の名は/ザ・モーニングショー

tv.apple.comThe Morning Show2019年~ アメリカ ニューヨーク在住のアレックス・レヴィ(ジェニファー・アニストン)は、ミッチ・ケスラー(スティーヴ・カレル)とのコンビで、大手テレビ局UBAの報道番組『ザ・モーニングショー』のメインキャスターを15年…

それは、「いたわり」のレッスン/僕はメイクしてみることにした①

kc.kodansha.co.jp 著者 糸井のぞ原案 鎌塚亮 主人公の前田一朗は38歳男性、お菓子メーカーに勤務している。「顔が疲れてますよぉ」と会社で指摘されても特に気にせず、いくぶん投げやり気味な生活を送っていたが、ある朝ふいに顔色の悪さや肌荒れを自覚する…

自分を救う男たち/ナビレラ -それでも蝶は舞う-

70歳のシム・ドクチュルは、貧しいながらも地道に働いて家族を養ってきた元郵便局員である。子どもたちはそれぞれ独立し、妻との仲は良好だ。平穏な日々ではあるが、老いは容赦なく襲いかかる。ひとり、またひとりと同年代の友人が亡くなってゆく中、ドクチ…

交差するわたしたち/あのこは貴族

東京生まれ東京育ち、裕福な開業医の親と松濤で暮らす27歳の榛原華子(門脇麦)は、結婚を考えていた恋人にフラれてしまう。その後の縁談や紹介などはどれもうまくいかない。結婚こそ幸福だと教育され、それを信じてきた華子は焦るが、義兄の友人・青木幸一…

ここから小さな革命を/作りたい女と食べたい女

store.kadokawa.co.jp 作りたい女と食べたい女1(2021年)著者:ゆざきさかおみ 料理好きの野本さんは、日々の食卓の写真をSNSにアップするなどして楽しんでいるが、本当はもっとボリュームとインパクトがあるものを作りたい。とは言え自身は少食で、さらに…

ごく身近な、人道的危機/パブリック 図書館の奇跡

youtu.be パブリック 図書館の奇跡(The Public)2018年 アメリカエミリオ・エステベス スチュアート(エミリオ・エステベス)は、オハイオ州シンシナティ公共図書館に勤める図書館員だ。同館は、近隣のホームレスたちが開館と同時に訪れ、トイレで身支度を…

センチメンタルにつぶされない/2分の1の魔法

" data-en-clipboard="true"> youtu.be2分の1の魔法(Onward)2020年 アメリカダン・スキャンロン かつては魔法が栄えていたが、習得の困難さや科学技術の進歩などにより衰退した世界。エルフの少年イアンは、兄バーリーと母ローレルの3人で暮らしている。 …

隣人をパーティに誘う方法/『バクちゃん』2巻

www.kadokawa.co.jp バクちゃん 2(2021年)著者:増村十七 少しずつ美術の世界に居場所とやりがいを見出してゆくハナ。一方バクちゃんは、自分は地球で何ができるのかと自問する日々が続く。おじの帰国も延期になり、言いようのない心細さが募るが、ダイフ…

リプロダクティブ・ライツの侵害という恐怖/『透明人間』

youtu.be 透明人間(2020年 アメリカ、オーストラリア)監督:リー・ワネル 支配的且つ暴力的な恋人エイドリアン(オリヴァー・ジャクソン=コーエン)の家から逃げ出したセシリア(エリザベス・モス)は、妹や友人家族の協力のもと、なんとか元の生活を取り…

となりのバクちゃん/『バクちゃん』

www.kadokawa.co.jp バクちゃん(2020年)著者:増村十七 ​ 漫画『バクちゃん』(増村十七)の打ち切りが決まった。 ということを知って、胸が奇妙にざわついた。『バクちゃん』はすこし前に1話だけ読み、それ以上は読み進めていなかった。 読めなかったのだ…

他人がかける「表札」に屈しない/『クレイジー・リッチ!』

youtu.be クレイジー・リッチ!(2018年 アメリカ)監督:ジョン・M・チュウ 中国系アメリカ人のレイチェル・チュウ(コンスタンス・ウー)は、中国系シンガポール人の恋人ニック・ヤン(ヘンリー・ゴールディング)の親戚から、「きみは台湾のプラスチック…

毛皮のコートに包まれて/『ハスラーズ』

youtu.be ハスラーズ(2019年 アメリカ)監督:ローリーン・スカファリア “搾取される”側が“搾取する”側を騙して荒稼ぎした過去と、デスティニー(コンスタンス・ウー)がインタビューに応じる現在が行き来する。 女子刑務所を舞台にしたドラマ『オレンジ・…